演劇現場におけるリスペクトトレーニング・ハラスメント予防研修の感想(2)

演劇ユニット鵺的 動物自殺倶楽部主宰の高木登さんより、感想をいただきました。

リスペクトトレーニング/ハラスメント予防講習の感想 12/23/22

演劇に関わるようになってから二十年以上が経ちました。その間、作家として、演出として、主宰として、怒鳴ったり、殴ったり、口説いたりという明確なハラスメントこそしてこなかった自負はありますが、一方で、マイクロアグレッション的な言葉の暴力を無自覚に行使してしまったり、先輩方の「武勇伝」を面白がることでハラスメントが醸成される空気に加担してしまったり、そうした類いのことはあったのではないか……という自責の念もありました。近年、映像業界、演劇業界ではハラスメントの告発が相次いでいます。決して他人事ではない、無自覚、無思慮のせいで人を抑圧する局面は可能なかぎり避けたい──まずは自分自身が学ぶ機会を得たいと思ったのが、今回露木先生に講習をお願いしたきっかけです。主宰を務める二団体を通じて実施するのは初めてだったので、鵺的のメンバーにも参加してもらい、稽古初日に講習会を開催していただきました。

講習会を受けて、やって良かったし、今後もやるべきだと実感しました。「明確なハラスメントこそしてこなかった」と書きましたが、それをはっきり団体の方針として「やりません」と皆の前で宣することは、思えばしたことはありませんでした。これを稽古初日におこなうことで、スタッフやキャストの「こんなこと言って良いのだろうか」「言ったら怒られるのではないか」「不当な扱いを受けるのではないか」という迷いやストレスを軽減することができます。また、これはコロナ禍における特殊事情ではありますが、稽古以外で親睦を深めたり、意見を交換したりという機会(つまりは飲み会や一緒に食事したりすること)が失われてしまっており、輪になって皆で話し合うことが公演における円滑なコミュニケーションの一助にもなると思いました。

人間と人間関係が複雑で多様なように、ハラスメントのあらわれ方もさまざまです。主宰から見える光景と、スタッフ、キャストから見える光景にもちがいがあります。一見仲良く、たのしげに見える座組でも、つらい思いをしている人がいるのではないか、抑圧されている人がいるのではないか──そうした想像力を常にめぐらせることを忘れずに、これからも自分に厳しく公演に取り組んでいきたいと思っています。ありがとうございました。

演劇ユニット鵺的
動物自殺倶楽部
主宰 高木登