児童専門のカウンセリングオフィスと言っておきながら、今日は大人の話です。
クライアントの方からもですし、
相談に来られた職員の方からも、
また、気の置けない友人からも聞くことがあります。
「自分を大切にしろ、って言われるけど、どうしたらいいかわからない」
「自分を愛さなきゃ、他者から愛されないって言われるけど、そもそも愛されたことがないから自分をどう愛したらいいかわからない」「他者から愛されもしない自分を、愛する価値がある対象と思えない」
こんな声です。
自分で自分を抱きしめてあげて、と言われて、
自分の腕で自分の身体を抱きしめる。
そういったことで、何かを得られる人もいると思います。
けれど、「何やってるんだろう……」とむなしいような気持ちになってしまう人もいるでしょう。
大事にされたことがないから、愛されたことがないから、こんな言葉もよく聞きます。
もしかしたらそうなのかもしれません。
そういうところもあるのかもしれません。
大事にする、愛するなどは漠然としているので。されたことがあるかないかは、なかなか外からはジャッジできません。
私は、児童相談所や児童養護施設で勤務していたときに、熱心に性教育について学んでいました(それはそれは、必要なことだったからです)。
その中で、主に(身体が)女性の児童が、性行為を強要されたときに「NO!」ということ、避妊を求めることの難しさについて、ずっと考えていました。※
どんなに性行為の知識を子どもたちに伝えても、
どんなに避妊の重要性を伝えても、
(親となる自分自身も子どもであり、それぞれの事情によっては経済的な後ろ盾も望めないなど)望めないタイミングでの妊娠によって人生がどれほど方向転換していくかをどんなに伝えても、
どんなに机上の「性教育」をしていても、
いざというときに、咄嗟に「私の身体は大切なもの!」「私の身体が傷ついてはいけない!」と思えないと、反射的な強い「NO!」は出せないのです。
避妊を求めるにしても「相手が不快に思ったらどうしよう。それくらいなら自分が傷ついたほうが…」となりがちです。
※身体が男性であっても「NO」の難しさ自体は同じですが、妊娠の可能性のことを含めて、女性の難しさを感じています。
そのようなときに、専門職である私たちがどうするのか。
(他にも方法はあると思いますが、まずは)
できるだけ小さなうちから、
自分の身体を大切にすることを教えていきます。
それはもうコツコツと技能を教えていきます。
それは、歯磨きの方法であり、手洗いの方法であり、体をきれいにする入浴の方法だったり、体を守るために衣服を身にまとうことだったり、清潔な下着を身に付けることだったり、三食食べることだったり、自分の身体を構成する栄養素について学ぶことだったり、夜に一定の時間に眠ることだったりします。
一見、性から離れたところからですが、
自分の身体を大切にする方法を学んでいくことで、次第に「私の身体は大切なんだ」「大切にした方が心地いいんだ」「自分を大切にして当たり前なんだ」「私は大切にされる人間なんだ」と実感を得ていってもらうのです。
もうおわかりでしょうか。
自分を大切にする、愛するというのは、漠然としたものでなくて良いのです。
それは本来は、具体的な、生活の中の小さなことです。
(そんなことを求めてるんじゃない!と思われるかたもいらっしゃると思います。そんなときには、ぜひ、カウンセリングを受けに来てみて下さいね)
・歯は一本一本丁寧に磨けていない。ざっとで終わらせちゃう。
・そもそも歯ブラシはいつ交換したっけ。
・歯の定期検診にそういえば行けていない。
・メイクのブラシっていつ洗ったっけ。
・最近、顔を洗うのが億劫で、洗顔フォームをちょっと付けてすぐに流しちゃう。顔をこすった覚えがない。
・唇が荒れてるのに、疲れて、リップクリームがぬれない。
・下着っていつ新しいものを買ったっけ。
・そういえばずっとシーツを交換していない。
・お風呂場のタオルっていつ替えたっけ。
・手が荒れているのに、ハンドクリームを塗るのが面倒でできない。
・食べたいものがあるのに、財布を出す気力もなくて、買い物ができない。
・お風呂に入っても、体はさっと撫でるくらいしか洗わない。私の身体を丁寧に洗ったのは、いつが最後だっけ。
・面倒で健康診断に行けていない。
・手洗いが面倒。
あとは、
・郵便物を開けるのが面倒で、郵便受けに入れっぱなし。
などなど……、他にもいろいろあるでしょう。
もしも、例として挙げた上記のようなことに思い当たるものがあれば、
少しだけ頑張ればできるものを、一つで良いのでやってみて下さい。
それが「自分を大切にする」「自分を愛する」一歩です。
実感はないかもしれません。
それだけですぐに満足もしないと思います。
ですが、絶対的に「自分を大切にする」「自分を愛する」一歩を踏み出しています。
その中の一つに【これなら続けられる】というものがもしあれば。
習慣になるまで続けてみて下さい。
そのうち「これってやっていた方が快適なんだ」と気づかれると思います。
きっとそういった快適さを自分自身で自分に与えていくことが、「自分を大切にする」「自分を愛する」ということになっていくのだと思います。
上記を読んで「そういうことじゃないんだ」「もっと空虚感がすごいんだ」「そんなものじゃ埋まらない」など思われて、辛いときには。そしてそれらをどうにかしたいと思われたときには。ぜひカウンセリングも視野に入れられてみて下さい。