いつなんどきも自分の子育てに自信を持てている。
そんなことができれば、どれほど良いでしょうか。
自分は「悪い親」でないか。
まわりの親友だちは、みんな楽しそうに見える。
自分だけが「うまくやれていない」のではないか。
夢に描いていた理想の子育てと、実際の子育てのギャップで苦しい。
このようなご相談はこれまでも、今も、数多く受けさせて頂いています。
仮に「自分だけができていない」と思われていたら、身近な人にはかえって話しにくい悩みかもしれません。
そんなときは、当オフィスでも良いですし、他でも良いです。ぜひ、専門家のところに足を運んでみてください。
心理学の歴史にしては古くから、
「よい親」というのは、
good enough mother
ほどよい母親
と言われています。
何十年か前、ドナルド・ウィニコット先生というイギリスの小児科医の先生が、そう言い始めました。それから心理の世界では、ずっと「そうだね」と言われてきています。大きな異論はないのです(多分)。
ほどよい母親というのは、文字通り「ほどほど」の親ということです。
生まれたての赤ちゃんには、親との一体感がとても大事です。例えば、赤ちゃんが「お腹空いたなー」と思えば、親も「お腹空いたよねー」と思ってミルクを与えます。
本当に赤ちゃんがそう思ったかはわかりませんが、そのときは強い一体感を持っていますので、親はあたかも自分ごとのように赤ちゃんの状態を察知します。
その一体感は、赤ちゃんが安心して、安全に育つために大切なものです。
(恋愛の初期なども、こういった深い一体感を味あわれる方も多いかもしれません。)
しかし、赤ちゃんはずっと生まれたての赤ちゃんではありません。
次第に成長していきます。
そのときに、最初の深い一体感から抜け出して、赤ちゃんの成長に合わせてできることは自分でやらせる、「ほどほどに放っておける」「すべてやってあげることから、手をひける」。
そんな親が【ほどよい母親】と言われます。
ですから、なんでも完璧にやってあげなくても良いのです。
子どもの成長に合わせて、手を抜いてあげる、楽をできる親が、
心理学の世界では「良い親」なのです。
子育てについてネットで調べていると、
誰もが完璧じゃない!
という言葉も、よく見かけます。
これはカナダ生まれの子育て中の親のためのプログラムです。
誰もが完璧ではなく、完璧な親は存在しません。
誰もが助けてもらいながら、学びながら、子育てをしながら親になっていくというのが、Nobody’s Perfectの考え方です。
江東区でも子ども家庭支援センターみずべでNobody’s Perfectの手法と理念を用いたプログラムが2018年の秋に開催されるとのこと。
「赤ちゃんと作る私の家族プログラム」
素敵な名前だと思いました。
少しだけ「ほどよい母親」の話に戻ります。
出典がわからないのですが、十五年くらい前、(たぶんAERAの)このような記事がありました。
育児のベテランであり、何人も育て上げた、おじいさまおばあさまが子育てをすると、子どもはどう成長すると思いますか?
素直に考えると、経験も豊かで、人格的にも成熟した世代の方が子育てをすれば、子どもは他の子と比べてスクスク育っていく、となります。
しかし、統計をとってみると、そうはならなかったようです。
多くの場合、成熟したおじいさまおばあさまは、子どもが何も言わなくても、子どもが望むことを察知して、与えたりやってあげたりすることができてしまいます。
先回りが、苦も無くできてしまうのです。
ですので、子どもは「自分でやらずとも」「アピールして欲さずとも」良い環境で育つこととなります。
子どもは成長しなくても、満足して過ごせますので、必然的に成長はゆっくりになります。
そのような内容でした。
この記事は、少し極端に内容を書いているように思いますが。
本質的にはそうなのだと思います。
(子どもの成長に合わせて、)すべて完璧にやってあげる必要はありませんし、むしろ完璧でない方が良いのです。
意外なことですが、気楽に、ほどよく育てることが、子どもの成長を促す結果となっていきます。
カリール・ジブラン
「預言者」より 子どもについて